様々な視点から祭を研究し、祭の魅力を再発見する「祭研究女子会」が発行する「まつり結び新聞」。第3号の中から、今回は日本民踊 鳳蝶流 家元師範であり、東京2020オリンピック競技大会の閉会式にて、盆踊りを披露された鳳蝶 美成さんへの取材記事をご紹介します。
他の土地の伝統文化を見て募った危機感
Q. 盆踊りに目覚めたきっかけは、何ですか?
盆踊りを始めたきっかけは幼少の頃。縁日が楽しみで、それにつられて毎年祭に行き、盆踊りを踊っていました。おじいちゃんやおばあちゃんが乗せ上手で、踊れば褒めてくれたり、縁日で買ってもらったりもして、自然と盆踊りが好きになりました。
そして、盆踊りに本腰を入れるようになったのは大学時代のこと。日本三大盆踊りである郡上踊りを見に行った際、同年代人たちが先頭を切って文化を表現していることに衝撃を受けました。当時、東京では私や姉がダントツに若手で民舞や盆踊りの活動をしているレベル。東京の文化を途絶えさせてはいけないと思い、YouTubeで動画をアップするなどして啓蒙活動を始めたんです。
Q. 祭と盆踊りの価値や役割は、何だと思いますか?
さまざまな意見があるので、一概にはいえませんが、盆踊りはもともと仏教行事の一つと言われています。その一方で、昔は娯楽が歌や踊りしかなく、盆踊りは農民たちや武士の息抜きの機会でもありました。それは現代も同じで、祭や盆踊りは人の心を豊かにするものだと思います。
また、祭や盆踊りは文化ですから、基本的には原価がゼロであるにもかかわらず、経済を回すことができます。縁日や提灯、浴衣などがまさにそうですね。日本の経済を豊かにする一つの方法として私は考えています。
そして、歌や踊りは世界共通の娯楽。日本人がフラダンスを踊るように、海外にも盆踊りなどの文化を輸出することで、盆踊りを踊ってもらったり浴衣を買ってもらったり、外国人観光客が増えたりと地域活性化につながるのではないでしょうか。
サステナビリティとD&I(ダイバーシティアンドインクルージョン)を同時に実現できるもの、それが盆踊りや祭なんです。
思うままに、楽しく踊る
Q. 盆踊り未経験の方に向けて、魅力を教えてください。
歌や踊りは世界共通の娯楽なので、未経験の方にも思うままに踊って欲しいと思います。ただ、コロナ禍の今、できることは少ないと思いますから、ぜひコロナ禍が明けた時の予習をして欲しいですね。
たとえば、コロナ禍前は古典的な盆踊りだけでなく、革新的なものもありました。
その中でも常に革新的なものを取り入れ活かしていく、活きた祭、それが私自身が実行委員長を務め、中野駅前で開催されている「中野駅前盆踊り大会」です。手前味噌ですみません。(笑)そこでは、DJが次の曲紹介をしてくれるコーナーや、ディスコソングで踊るコーナーもあります。
もともとは生演奏で踊っている先生方が休めるように設けた時間なのですが、ディスコソングであれば若者も参加しやすいですし、その流れで盆踊りに参加してもらうことができる。踊り手の人口を増やすための一環でもあるんですね。
ただ、難しいのが「できないと恥ずかしいから踊りたくない」と思われる方が多い。しかし、事前に少しずつでも予習をして、当日いかに楽しめるかを考えながら頑張ってもらえれば、当日はもっと楽しんでもらえると思いますよ。
Q. 盆踊りを広める取り組みで大切にされていることはなんですか?
みんなが楽しめることですね。振り付けを考える時も、踊りやすくてテンションが上がるような振り付けを意識しています。この想いは次世代にも伝えていきたいと思っています。
盆踊りは「自分だけが主役」というものではなく、みんなで楽しんで盛り上げていく文化ですから、みんながD&Iとサステナビリティを意識すれば、どんどん人が増えて楽しい祭になると思います。
私たちは踊る文化を伝えていますが、見る人の文化や歌をつくる人の文化があってもいいと思うんです。コロナ禍を絡めた歌詞をつくったり、楽器を演奏したりもそうですし、同じ文化を楽しめる手法をみんなで作り上げていくことを文化にしていきたいです。
受け継いだ文化を、次世代に繋ぐ
Q. 美成さんの夢を教えてください。その夢を実現するには何が必要だとお考えですか?
私の夢は「地域の人が地域の為に本気で楽しめて参加できる祭を作ること」です。
祭がなくなる理由はたくさんあるのですが、まずは、祭を運営する人や、踊りを教えたりする人が少なくなっていること。そして、祭を開催するための資金不足です。
私の地域も私が取り組むまでは母親が最年少と言われる時代が長く続いていました。やはり文化をつくり、担う人々の年齢を下げなければまずいなと思っています。
しかし、いざ若い人々が祭をやろうとしても、お金を集めることはやはり難しい。ですから、そこは地域の経済を回す人々が集う商工会議所や行政の補助金をうまく使いながら祭をつくっていく必要があります。とはいえこれは大変なことですから、もし祭を新たに盛り上げようという人がいたら、ぜひ身近な祭を手伝ってあげてください。
Q. あなたにとって祭とは?
生きること自体が祭みたいなところがありますね。ある意味、生きることよりも祭の方が大事かもしれないと思うくらい祭が好きです。先人たちが千年以上守ってきたことをリスペクトし、自分の将来も盆踊りに捧げたいと思っています。
美成さん、ありがとうございました!
取材時、盆踊りが身近なメンバーや全く踊ったことがないというメンバーもいる中、さまざまな視点での質問が繰り出され、学びの多いお時間でした。また、盆踊りがD&Iやサステナブルにつながるというのは、非常に興味深いお話でした。
そして、取材後には祭研究女子会メンバーから「オンラインで盆踊りをしよう!」という声も。祭研究女子会でも盆踊り部発足の予感です。
浴衣を着てみんなで盆踊りを踊れる日を目指して、私たちも活動を続けていきたいと思います。
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(Text by 利根川 舞/祭研究女子会)