祭の本質的な価値に迫ることは、祭をとりまく課題や解決策を考えるきっかけとなる —
祭エンジンでは、様々な方と多様な視点で祭についてお話し、“祭とは一体何なのか”に迫り、現代の在り方について考えを深めていきたいと思います。
今回の記事は、現代の祭の在り方について考え、議論するclubhouse企画「現代祭論考」のトーク内容です。
2021年10月1日(金)に第一弾が行われ、トークテーマは「私たちはなぜ祭をするのか」でした。
モデレーターは、祭研究所女子会の川島飛鳥さん、ゲストは神主の柴田良一さん。
祭エンジン代表・宮田も含めた3人のトークを、前編、中編、後編でお届けします。
前編:なぜ祭をするのか
中編:なぜ祭は楽しいのか
後編:なぜ地元の祭が一番楽しいのか
ぜひ、お楽しみください。
〈対談者プロフィール〉
柴田 良一(しばた りょういち)
HN:いずみしんじ
横須賀市出身。國學院大學大学院博士課程後期単位取得退学。東京都中央区住吉神社権禰宜。
YouTube『神主の遺言 本当の私発見チャンネル』を運営。人間の心に焦点を当てながら、日本・神社・祭りなどの魅力を発信。
鬱(うつ)やパーソナリティー障害などの精神的な苦しみについても独自視点の考察を行っている。
川島 飛鳥(かわしま あすか)
茨城県ひたちなか市出身。株式会社PR Table PRチーム所属。ゲストハウス水戸宿泊交流場イベント企画担当。
祭は準備する段階から関わるのが好きな「祭研究女子会」メンバー。もっと日本全国の祭を知りたく勉強中。
宮田 宣也(みやた のぶや)
横浜市栄区出身。一般社団法人明日襷(アシタスキ)代表理事、祭エンジン代表。
神輿や神棚の修理・製作、祭文化の活性化事業を行う他、全国各地の祭やヨーロッパへの神輿渡御など海外でも活動をしている。
祭は準備と片付けが楽しい
宮田:今日は、祭研究女子会のあすか、神主のりょうちゃんと一緒に、祭とは何なのかについて議論していければと思います。早速りょうちゃんから、自己紹介をお願いします。
りょう:ハンドルネームは、イズミシンジなのですが、本名は柴田良一なので、りょうちゃんで構いません。40才のおっさんで、神社の神主やってます。また、Youtubeでもお祭のことを発信しています!いろんな人の発信を聞く中で、宮田さんの発信を発見し、勇気を振り絞って私の方から連絡してから仲良くなりました。宮田さんのことが大好きです。(笑)
宮田:ドキドキしますね(笑)Youtube見てもらったらと思うのですが、りょうちゃんは祭、神道、神社について自らの意見をお持ちなので、他では聞けない見方が聞けると思います。お楽しみに。
あすか:祭研究女子会に所属している川島飛鳥です。日本の祭が大好きで、一緒に活動しています。もっと日本全国の祭を知りたくて、勉強中です。さて、1時間早いと思うので、早速今日のテーマについて進めていきましょう!
宮田:今日は、りょうちゃんからもらったテーマ「私たちはなぜ祭をするのか」について話していきたいと思います。まず、あすかちゃんがなぜ祭をするのか、なんで祭が好きなのか、について教えてください。
あすか:私は、子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで世代を超えて熱狂できるその瞬間がすごく楽しくて。やってる最中はもちろん、作り上げるまでの過程もお疲れ様の飲み会の時間も1人で楽しむというより、みんなで楽しい空間にいる自分が好きなんです。その感覚を全身で楽しめるので、私は祭が大好きです。
宮田:りょうちゃんは、どう思いますか?
りょう:この人ホント祭好きなんだなっていう人って、共通のキーワードがあると思っているんです。それが「準備と片付け」なんですよね。本番じゃなくて、準備と片付けが楽しいと言っているような人は、本当に祭バカですね。なので、あすかちゃんは、祭バカです(笑)
あすか:(笑)私は、その期間が本当に好きなんですよね。
りょう:作り上げていく感じと、片付けしながらすごい遠い来年に祭が待っている感じも楽しいですよね。
あすか:そうです。神社に物を片付けながら、「また来年会おうね」って言っている時間も好きです(笑)
宮田:祭って一瞬ですもんね。僕、空手やってましたけど、試合って本当に一瞬なんですよ。そのために調整とか2ヶ月くらいかけてやるんですけど、それがあって試合が充実して、自分にとって特別な1日になると思うんです。もし、3日間前に練習しただけだったとしたら、試合に勝っても、きっとそこまでの喜びはないですよね。準備があるからこそ、試合の1日が自分にとって特別な時間になるんです。
本番の日まで想いを重ねられるか、積立貯金できるか、ってことだと思うんです。僕にとって祭は、日々積み立ててきたものを一気に清算する日という感覚です。
りょう:さすが分かってますね、宮田さん。
宮田:祭好きなんで、実は、僕(笑)
「理由はないけど祭が好き」の先にあるもの
あすか:私自身、神主さんって身近にいなくて、りょうちゃんがどういう経緯で神主になったのか?祭の関わり方について聞きたいです。
りょう:なぜ私が神主になったのかという動画をあげているんですが(笑)いろんな理由はあるんですけど、単純に祭が好きだから、です!!!
宮田:最高の答えですね。
りょう:でしょ。無条件に祭が好きなんです。人間の“好き”には2つあると思っていて、それは理由がある好きか、理由のない好きか、です。
「人によく思われるから好き」「人に褒めてもらえるから好き」は、理由がありますよね。なんでかわからないけど好き、周りから「もうやめなさい」と言われるんだけど好き、やってると夢中になって時間が経つのを忘れてしまう、というのは理由がない好きです。
私にとって、祭、神社、日本は僕にとって理由の無い好き、なんですよ。それがきっかけで「こういうものを未来にどういう風につなげていくか、お守りするか。」と思った時に、まず自衛隊に入って鉄砲を持つことを考えました。けれども、自分は神主になって、神様に日々お祈りして、お祀りして、日本と地域と皇室の弥栄(いやさか)※ を願う立場になって貢献したいと思って、神主の道を選んだんです。
※弥栄(いやさか):ますます栄えること
こう聞くと、かっこよく聞こえるんですけど、いろんな気持ちもありました。ぜひ、詳しくはYoutubeチャンネルで見てください。
宮田:流入させようとしてますね(笑)でも動画でとても詳しく語ってますよね。
今、お話していた理由の無い好き、という感覚とても分かります。ふぁ〜っとした好きの気持ちや、グッとくる気持ち。これって日本に祭が残っている大きな理由だと思いますね。「この日すごく特別な気持ちになった」という感覚が、祭をやり続ける理由や意味になりますよね。それが日本全国どこにいっても祭に命かけている人がいる理由なのかなって。理由がない好き、だけど、本当は理由があるんじゃないかという視点から、敢えてここを分解していきたいんですよ。
よく“日本人の遺伝子”などと言われますが、それって一旦なんなんだというところを探ることで、祭を次世代に届けていけるヒントが見つかるのかなと思ってるんです。
もしかしたら、日本語や、毎日見る風景、習慣など日々日常的に接しているけど、実は日本でしか感じられないものにあるのかもしれないなと。普段当たり前に挨拶したり、日本の中では当たり前の親子関係だったり、四季があって旬のものを食べたりとかもそうですよね。
このような日々の当たり前の積み重ねが、全て祭の日につながっていて、その日めちゃくちゃ素敵な気持ちになるのでは、と僕は思います。
理由のない好きの中に理由を見いだすことができたら、そこを強化すれば良いと思うんです。もう一回見直すことから始めれば、もっともっと祭が好きな人たちが増えてくれるかもしれないし。祭に参加する人がもっと好きになるようなヒントがあると思ってて。
りょう:まさに、なぜ祭をするのか、ということに関わってきますよね。
宮田:敢えて理由を深掘ってみるという視点から見て、りょうちゃんはどう思いますか?
りょう:これから柴田ワールドに入りますが、大丈夫ですか?笑
あすか:お願いします!(笑)
宮田:入りたいです(笑)
中編に続きます 。
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(text by 伊藤里加子/祭エンジン事務局)